「あんた、さっきから何なのよ!」

「別に」

「人をいじめて楽しんでるの?」

「それは君であって、俺じゃない」

「小さいくせに五月蠅いわよ」

「身長で優劣をつけないでくれるかな? 歌わないなら、帰ってくれない? はっきり言って邪魔だよね」

茉莉は唇を噛み締めると、俺のつま先をブーツのかかとで押しつぶしてきた

「何も知らないくせに」

「それはお互い様でしょ?」

「なんなのよ!」

知らないよ…俺だって、なんでここに戻って来たのか

理解してないんだから

茉莉は苛々しながら、鞄の中から煙草を出してきた

俺は、茉莉の煙草を奪うと床にたたきつけて、踏みつけた

「な…何すんのよ」

「子ども、産む気ないの? 不妊症になるよ」

「うるさいなあ」

「自分の身体を、自ら汚してどうするのさ。親から与えてもらったんでしょ? 君は君しかいないんだよ…この世にさ。だから君自身が、君を守らないでどうするの?」

茉莉は唇の端を噛み締めると、目を充血させた

「不妊症になったって別に…いいわよ。どうせ…もう産めないんだろうし」

「ふうん。無認可の場所で、子どもを堕ろしたんだ」

「葉南のおしゃべり」

茉莉が舌打ちをする

「葉南じゃないよ。葉南は何も言ってないし、今回の計画だって何も知らなかったんだ。今の言葉、俺の想像で言っただけだよね」

「え?」

茉莉が驚いた声をあげて、俺の顔を見てきた