開いているスペースに車を止める安本先生。バックする時に、助手席に腕を回す というオプション付きで。
「こういう所、初めて?かーわいぃ~!
大丈夫だよ。ちゃんとごはんもメニューにあるし、飲み物だって豊富なんだから」
にこぉぉーッ。
エンジンを切りながら笑う。
…こんなに安本先生の笑顔が恐ろしいと思ったのは初めてだ。
それに、
確かにこういうホテルに来た事は無いけれども、ここが何をする為のものなのかぐらいは知っているつもりだ。
「あの…ッ!でも、先生は喫茶店のコーヒーしか飲めないんじゃ…」
「うん、だからここでは別な物を頼むよー」
いや、あたしはコーヒーを喫茶店で奢るために着いて来たんだよ!!
「あたし……あの……ッ、ここで失礼させて頂きます!!!」
バッグを掴み、シートベルトを外すと同時にドアに手をかけ するりと外に抜け出す。
走り出そうとしたのに、閉めたドアにコートが挟まって
逃げ出す時間を遅らせた。
その間に安本さんは外に出て あたしの腕を力いっぱい掴む。
「…逃がさないよ…?」
イヤ…
イヤ いや 嫌嫌嫌嫌…!!!!!


