入口にもたれかかる彼の姿。
笑顔を作ってはいるけど、それを通り越して怒りと負のオーラがあたしには見える…!
「君は…」
新入生代表の子 だよね?
鼻を擦りながらそう尋ねる柳瀬さん。
彼の足もとには、真新しい内履きが転がっていた。大和…こんなものを投げつけたのか。
「どうしたの?まだ入学後の説明が残ってるんじゃない?」
「あー。実は気分が悪くなっちゃって。少しでいいんで休ませてもらえませんか?先生からは許可もらってます」
気分が悪い?そんな風には見えない位元気そうだけど…
「それならいいよ。腹痛?頭痛?」
靴を投げつけられたのにもかかわらず、柳瀬さんは嫌な顔一つせずに対応する。
…あぁ、そう言えば学校じゃ『明るいキャラ』なんだもんね。
「いや、多分寝不足で。今日の式の為に昨日から緊張してたんですよ」
「そっかー。立派に振る舞ってたもんねー。
じゃあ、窓際のベッド使って。
あ、ここに名前書いてくれる?一応決まりだから」
手渡された紙にすらすらとペンを走らせる大和。
その握る手から 指の先、紙を抑える左手 それにペンまでもが美しく感じられる。
なんでこんな事が絵になるんだろう…
ただ名前を書くと言う動作が 彼の手にかかれば芸術の域を軽く超えてしまう。
あたしの胸の高鳴りは止む事を知らない。


