立ち尽くすあたしを
「おいで」
自分の隣へと招く。
ふかふかではないけれど、お尻が沈み込む様なソファーの座り心地に少し安心する。
「…何が不安?それとも不満でもあるの?」
セットが崩れてきた髪の毛。それを彼は優しい手でほどいてくれた。
「不安とか、そんなんじゃなくって…。
ただ、大和にこんなとこに泊まるお金を出させてしまう事に情けなさを感じてるってだけで…」
手ぐしでいつもの髪型にしてくれる、その優しい感触に ぽろりと本音が出てしまう。
「バカだな。本当に。
…ここは、親父のコネで泊めてくれるように頼んだ。お金は…
この、今日の為にバイトしてたんだから良いんだよ」
「バイト!?いつから…ッ!?」
聞いてなかった。…いや、大和はそんな事を一々報告する人じゃないから仕方はないけど…
彼の事なら大体は知っている自信があっただけに、何だかショックだ。
「どうせ一緒に帰れないんだから、何かの為に金を稼いでも良いんじゃないかって思って。
…大丈夫。変な所じゃないから。
国枝ん所で接客だけ…」
…聞けば、クリスマスまでにお店を盛り上げて欲しいと頼まれていたという。
和菓子屋さんにとって、クリスマスは最大の敵らしい。
「バイト代、結構はずんでくれてさ。どうにか今日までにここの宿泊代は稼げたよ」
情けないけどな
拗ねたようにそう呟いた。
だけど、彼があたしの知らない所でこんな事を計画してくれているのだという事実に感動していた。


