ハァッ ハァッ



吐き出した息は、白く色を持って すぐに消える。




気持ちだけが先走って、涙となり 溢れだす。




それでも必死で走って、走って…




走りながら大和に電話をかける。



『お掛けになった電話は、電波の届かない所にあるか…』



まだ、会場に居るのだろうか。



それとも、電源を切ってる?



でも、最初に向かうべき場所は分かってる。



彼と離れてしまったあの場所へ…





タクシーでたった5分の距離は、自らの足にすると相当な距離に思えた。



それに、普段の倍の高さはありそうなピンヒールでは益々時間を食ってしまう。



途中で止まり、靴を脱ぎ捨てた。



幾分かは走りやすくなったものの、既に体力は限界を超えている。



それでも



前に進むしかないんだ。