ぎりり と歯が擦れ合う音がした。


「…うるせぇよ」


否定はせず、そうとだけ呟いた大和。


最早反抗出来ずにいる少年を、尚もカナトは言葉の刃で攻撃する。


「分かっているのに彼女をこうして困らせるなんて

母親を取られたくない子どもと一緒だな。


…分かったかい?


なにも出来ないなら、しなきゃいい。


幸せにできないなら、潔く諦めた方が良い。



……彼女は、今日はこのまま俺が預かるよ。良いね?」



ちょ…!!


「ちょっと、カナトさん!!どういう事ですかッ?」


完全に思考がストップしてしまった。


預かるって?

諦めろって?



ねぇ、あたしの意思は関係ないの?



……でも、大和が何も反論せず、追いかけてすら来ない状況に


選択肢は一つしかないって 気づいてしまったんだ。



あたしの事になるといつだって躍起になってきた彼が追いかけて来てくれないなら



今は何を言っても仕方が無いのだから。



たとえソレがあたしの言葉でも。