薫ちゃんは、女物の腕時計をちらりと見て


「良かったら、これから会社のみんなと忘年会がてらのパーティーがあるんだけど

一緒に来てみる?」


と、あたしを誘ってくれた。


自分も腕時計を見やると、短針と長針が6と7の間で重なり合っている。


「あ、もしかしてそろそろ集合時間?」


辺りは真っ暗だし、だんだん人ごみも増えてきて


行くにしろ行かないにしろ


あたし達がこの場で突っ立ってるのは場違い過ぎた。




「ねぇ~ん。行きましょうよぅ!

有名人も来るのよッ??」


するりと腕を絡ませて、左右に振ってくる。


「有名人?誰?」


あまり乗り気じゃないあたし。興味はありませんよー っていうニュアンスで聞いてみたのだけれどッ


薫ちゃんの口にした俳優の名前で あたしの瞳は輝いてしまったに違いない!!



「周防 カナト。あんた、大ファンでしょう?」



…うん、恥ずかしながら そうなんです。


私と2つしか違わないのに、大人な雰囲気で。はにかんだ表情は、この世の女性全てを魅了すると言われている位キュート。

そして何より


「演技がナチュラルで泣けるのよねぇぇ」


薫ちゃんまでもを虜にする周防カナト。


そんな大スターの名前を聞いてしまったら!!


「行くしかないでしょう!!」