病院のロータリーに止まっていたタクシーに乗り込む。



「どちらへ行かれます?」


「え…」


…しまった。住所知らないや…。


「えーと、取り合えず駅の方に向かって下さい」


ハイブリットのタクシーは、音もなく動き出す。


その間にケータイを取り出し、あの人に電話をかけた。



「…あ、柳瀬さん?え?体調は大丈夫だけど

それより、伊集院さんの住所教えて!

大和が連れ去られたかもしれないの。


…落ち着いてよ。


とにかく、もうタクシーの中だから 早くしてね!」



…連れ去られたかもしれないって言った時の柳瀬さんの慌てよう…。


電話口で奇声をあげられちゃ、耳が痛いよッ


2分ぐらい経って、今度は落ち着いたらしい柳瀬さんからの電話で住所を知る。


運転手さんにそれを伝えて


伊集院さんのうちに向かった。









―――――15分ほど車に揺られ、着いたのはとてつもない豪邸だった。





「…スゴ…」




ここにドーム球場が建ってしまうんじゃないかと思う位に広い。



うちの三倍位ある住居と広い庭。更には森のような所も敷地内にあったりして



「住む世界が違いすぎるッ」