「良くないから聞いてるんだけど。


脅されたんだから、素性ぐらい知っとかなきゃ。訴える時の為に…うッ!!!」


ダンッ


!!!!!


胸倉を掴まれ、手すりに押し付けられる。


首に食い込んでくるこいつの腕が、思うように呼吸を出来なくさせていた。



「黙れよ、あんたが知った所でどうにかできるなんて思うんじゃねぇぞ?

揉み消す事なんて容易いんだからな」



…じゃあ、何で今こんなにも必死なんだ…?


それは声にもならなかったけれど…


「…これ以上ふざけた真似するんなら、ここからお前を突き落とすことだってできるんだからな…」



「な…ッ…やめ…」



「黙れよ。お前なんか…お前なんか、いなくなればいいっ…!!!!」




突き落とされる前に、窒息死しそうだ…


確実に殺意を持って向かってくる彼が、何故か怖くなかった。


…必死な姿が滑稽で、可哀想に思えてくるなんて


あたしもバカだよね。



だって、分かってしまったんだもん。



この子、伊集院さんの事が、好きなんだ……




薄れゆく意識の中



「さなッ!!!!!」




大和の声が聞こえた気がした―――――――――