外はどんよりとした雲が空を覆っていて


あんなに明るかった部屋が、急に夜になったかのような変化を遂げていた。



きっとそれは天気のせいだけじゃないのだろうけど。




「…小学校の時。自分の生まれた時の事を調べる授業があって。


それらしい話は両親から聞けたんだけど…、お腹にいた時の事とか、陣痛の時の状態とか

そういう具体的な話は殆どなくてさ。

ちょっと物足りない感じだったけど、両親の子でないとは疑ってなかった。


…押入れを見るまではね。


仕事で手が離せない両親だから、煩わせることなく昔の写真を手に入れたいと思って

前にお菓子の缶から写真を取り出して見せてくれたのを思い出し

勝手に寝室の押し入れを漁ってみたんだ。



見つかった缶の底に、一枚の紙があって。


見たら戸籍謄本だったよ。俺の名前の横に“養子”と書かれた…ね」




不意に立ち上がり、電気を付けた国枝君。


部屋を明るく照らしてくれる蛍光灯の明かりも、この空気までは変えられないみたいだ。




「子どもながらにショックだったけど

今まで精一杯の愛情を注いでくれた両親を責めるわけにもいかず

こうして育ってきたってわけ。


…寝たきりになったばぁちゃんにそれとなく聞いてみた事があったんだけど


なんでも、母親は子宮の病気でもう子どもが産めないんだって。それで、どうにか後継ぎを と死んだ爺さんが俺を養子に貰ってきた


そう言ってたよ」



だからと言って


「俺自身、両親が他人なんて思っちゃいないけど」







―――バチバチと屋根を叩き始めた雨。


会話が途切れたこの部屋では、いつもの何倍にもなって五月蠅く感じた。