前の授業の名残
黒板に書かれた昔の武将の名前を消しながら思う。
『彼女はお姫様なんだ』と。
花よ蝶よと育てられてきた、箱入りのお嬢様。
自分の為に色んな人が尽くしてくれるのが彼女の普通。
それが自分の家が援助している所の娘なら尚更で
歯向かうような真似をしたら即刻切り捨てるのが
“普通”なんだ。
伊集院さんは、大和の事を他の人とは違うと言って好きになったけれど
周りの子たちが 彼女が大企業の娘だからと気をつかってきた事実に
言動が自己中心的で間違っている言動をしているのだということに
微塵も気づくはずが無い。
……残酷なお姫様。
それが確信的なものでないのなら 尚更に。
手についたチョークの粉を払い落し、振り向く。
「授業を
始めます」


