取り残されたあたし達。
「えーと。取り合えず、タクシー拾う?」
「……」
無言でコクリと頷く国枝君。
すぐに来た個人タクシーに乗り込み、家の住所を告げた。
ゆっくりと発信する。
その運転しているオジサンがまた明るい人で。
「二人はカップルかい?」
なんてミラー越しに笑って尋ねてくるのを
「違いますよ~」
とかわす。
それでもしつこく
「でもお似合いだよ?」
とか
「良いねぇ!若いって!」
とか。
どうしてもオジサンはあたし達をくっつけたいらしい。
気付けばあたし一人がその対応に追われていて。
黙りこくって窓の外を眺めている国枝君に
「あんたもちょっとは否定しなさいよ!」
とキレてみせると…
「腹へって喋れない」
ものっすごい小さな声で呟いた事は、一生忘れないだろう。


