国枝君のご両親は、有名な和菓子メーカーに吸収されそうな老舗の和菓子屋さんで。


店舗も幾つかあるみたいなのだけれど、その売れ行きが一向に上がらない。

このままだと売れ行きが芳しくない店から順に閉めていかなければならないらしいんだ


と、大和が言っていた事がある。


その顔は真剣そのもので。


相当心配しているのだと一目でわかった。



大和が彼を心配しているように、彼も…違う面で心配しているのだ。



「余計な御世話かもしれないけど、あんたは隙がありすぎる。


そのせいでどれだけ大和が心配してるのか分かってるか?

その隙さえ無けりゃ、あいつも頭を悩ませなくて済むのに。


…さっきだって、嫌なら嫌って言えば良い。


無理ならそこで切ってしまえば話は拗れない。


変に気をつかうから期待されて面倒なことになるんだ」




「…分かってるよ…」



説教モードに入られたご様子。



…彼の言っている事は、分かってるつもり。


嫌われたくない。

モテる事に優越感が無いわけじゃない。



だからはっきりと断れない。



分かっているつもり。


やっているつもり。



断ってるつもり。




“つもり”だらけなんだって、分かってるよ。