「…俺と何を話すって?」


「え…?

あの…何でも良いんです。趣味の事とか進路の事とか…。

私たち伊集院様には敵わないって分かってるんです。ただ、お話ができればそれだけで…」



「あのさ」



何を言うんだろう。



でも、きっと酷い事なんだろうな。



この声のトーン。迷惑がってる証拠だって 分かってしまう。



「悪いけど、俺はあんた達にも伊集院さんにも興味が無い。
それを前提で、まだ俺と話したいと思うか?」



ああ~…!!もう、本当にこいつは女心ってもんが分かってない!!


気になる男にそんな事を言われて傷つかない女の子がどこに…



「良いんです!!それでも…!!

ただ、一ファンとして 田原君の事を知りたいのです…」




…居ました。居ましたよ、こ こ に。



「…はいはい。分かったよ。


斐二。この子たちがお前と話したいんだとー」




「……何?」



のっそりと歩いてくる彼(寝ていたらしい)。


それを見て、あたしはさっさと職員室に帰った方がいいのだと悟った。



5人ほどの取り巻きを従え、
器用に、右手でくるくるとペンまわしをしていた大和からそれを奪い取ってペンケースに戻すと


「いいわねー、若いって♪」


と、ちょっと皮肉って、教室を後にした…。


と思ったら。



「先生!!!!」



ぎくり。


振り向き、声の主を確認する。


声をかけてきたのは、先ほど大和に先陣を切って話しかけていた女の子だった。