「…理事長の息子さんなら美味しいもんいっぱい食べれてるんじゃないんですか?」
小躍りしていた彼は、その質問でピタッと止まってしまった。
…まずかったかな、この質問…。
「言ってなかったっけ。俺一緒に住んで無いって」
「いや…聞いてないと思う」
「なーんか、理事長が変に気を使ってくれちゃって。
今まで一緒に暮らしてなかったんだから一人の方が気を遣わなくていいだろう
ってさ。
すっげー豪華なマンションを手配してくれたのは良いんだけど、俺料理出来ないし。
祖父さんのとこに居た時は、全部祖父さんがやってくれてたし
大学の時はしょっちゅう食堂で飯食ってたし。
自炊なんてした事ねぇもん。ここ4年くらいずっと一人暮らしだけど
夜はどっか食いに行くし、朝もパン位しか食ってない。
ほら、ちょースリムじゃん?」
ガバっ
…この人腹を出してますけど。
「早く仕舞って下さい。じゃないと叫びますよ?」
「…あれ?意外と免疫ある?もしかして見慣れてたりして。
男の は・だ・か☆」
「分りましたから仕舞って下さい」
ちぇーっと言いながら、せっせとワイシャツを仕舞い込むこのおバカ。
免疫があるとかじゃなく、特に好きでもない男の上半身を見た所で赤くなるほど純粋じゃないって分からないのか。
でないと、水泳の授業の時は大変な事になるぞ。


