音楽室からショパンが流れてきた


ショパン 前奏曲 15番 「雨だれ」



私のとても好きな曲だ。

恋人を待ちながら
ポツポツと降る雨を数える
そんな曲だとママに聞いたけれど

本当はまるで違うらしい。



「本当」なんてどうでも良くて
私にはそんな風にしか聞こえない
どんな音楽であれ小説であれ
どう受け取るかは自由のはずだ



そんな事を考えていたら
どんな人が弾いているのか
気になってきてしまった



私は音楽室のドアに手をかけて
そこで振り返り ひとつ息をつき

家に帰る事にした


お世話にも上手いとは言えない
そんなショパンを弾く人は
きっと「普通の人」だ


私はこれから毎日妄想するとしよう
どんな指先で どんな声で
どんな背丈で 何が好きなんだ



平凡で感動もないショパンは
妙に心地が良い

きっと待つべき恋人もいない
野暮ったい男なんだろう



きっと私にはぴったりの男だ。