「世の中には生きたくても生きられない人もいるんだよ。」
何を言えばいいかわからなくて、私は世間でよく言われる決まり文句をそのまま口に出してみた。
「は?普段そんな事考えてないくせに、こういう時だけ偽善者ぶるんだね」
今までに見せた事のないような表情で私を睨み付ける悠紀の表情を見て一気に心泊数があがった。
「…悠紀?」 
「なんで真面目に生きようとしてる人ばっかり肯定されんの?!」
悠紀は立ち上がって私に怒鳴り付けた。
「待って悠紀…」
私の言葉もむなしく悠紀の声だけが響いた。
「『生きたくても生きられない人がいる』ってなに?じゃあ『生きたくないのに勝手に産み落とされた人』はなんで否定されるの?
人間として生きたい!とか言って自ら志願して生まれてきた赤ちゃんなんていないでしょ?」
悠紀の目には涙がたまっていた。
私は何も言い返せず、鞄を拾いあげて悠紀の家を飛び出した。