悠紀は寝転んだまま天井を見つめた
「時々、わからなくなるんだよね。」
「何が。」
「人間てさ、
何においても終わりを目指して頑張ってるじゃん。
フランス料理のフルコースだって、文化祭だって、テレビ番組だって。」
「そりゃそうだね。」
「頑張ってる時は気付かないけど、
結局その終着点までの期間が楽しくてさ。
それこそ終わりを迎えた時の達成感が快感になるんだろうけど」
「うん」
「結局その後残るものってなに?」
「え…思い出とか…経験とか?」
「例えば?」
「あの時は楽しかった、とかあんな事もあったなぁって思い出すの楽しいじゃん。」
「そんなのつかの間の喜びでしょ。」
「そうかな。」
「そりゃ時々思い出して、幸せな気分になったりする人が大半だと思うよ。」
「そうだね。」
「でも私にはむなしさと後悔だけがじわじわ残るの。」
「それはみんな一緒じゃない?」
「私はそれがいやなの。
でも結局人生それの繰り返しでしょ?それならさっさと自分で終わらせちゃおうと思った。
…できなかったけどね」
悠紀は笑った。
悠紀の言ってる事はもしかしたらむちゃくちゃなのかもしれない。
しかし私にはどんな哲学者や評論家が話す言葉より説得力を感じた。
理由は分からない。
「今もそんな事思ってるの?」
急に私は不安になった。
「…まぁね」
悠紀は遠い目をした。
よくわからないけど悲しい気分になった。