旅行とは名ばかりの二人旅を終え、その後も時々お互いの家を行き来しているうちに冬休みは終わり三学期を迎えた。
「悠紀、本当はあるんでしょ。」
私はベッドで寝転がりゲームをしている悠紀を見つめた。
「は?なにが?」
悠紀はゲーム画面から目を話さずに私の声に応答した。
その日の放課後も私は悠紀の家に来ていた。
ここ最近常連になっている。
「一回はあるんでしょ。本気で死のうとした事。」
悠紀はプツっとゲームを切ると私を見た。
「…なんで。」
私が彼女の手首の傷を見つけた時、1本だけ深い傷があったのを見逃さなかった。
それも、一番新しいような傷だった。
「あたしはなんでもわかるんだよ。」
私は適当に答えた。
私がなぜわかったかという事より、なぜ悠紀が本気で死のうとしたかの方が重要だった。