「麗華旅行行こう。」
それはあまりにも突然の提案だった。
悠紀といえば、私が妹の部屋から持ち出してきたプレイステーションのぷよぷよに夢中でさっきまで私の話なんて聞いていなかったからだ。
それ以前に悠紀が家に来たのも突然だった。
テストが終わり冬休みまでの間ほとんど休みなので、それぞれ自分の家で暇な時間をもてあましていた。
春休みまであと3日、という時、突然悠紀から電話がかかってきた。
「麗華ん家どこー?」
「はっ?何で」
「今麗華の地元の駅まで来てんだけど。」
「はっ?何で」
「麗華ん家行こうと思って」
「はっ?何で」
「暇だから」
なんで悠紀はこんなに突然なんだろう。
「わかった。今から駅まで迎えに行くからじっとしててよ。」
私が家を飛び出そうとした時だった。
「あっあった山崎」
電話口からそう聞こえて私は慌ててカーテンの隙間から外を覗くと、コンビニ袋を下げた悠紀が立っていた。
「もう、今度家来る時はちゃんと事前に連絡してよね。」
私が言うと悠紀は笑った。
「だって急に思い立ったんだもん。それより旅行いこ旅行。」
私は呆れてため息をついた。
「どこに?」
「アメリカ。」
「お金ないよ。」
「でしょ。だから東京。」
「何しに。」
「sightseeing」
悠紀は発音よく言った。
そういういきさつで私達は東京旅行に行く事になった。