「悠紀、これ…」
私は悠紀の手を掴み自分の方へ引っ張った。
「あぁ」
彼女は私の手を降りほどき、ブラウスの袖を伸ばして傷を隠した。
「今はしてないよ。2〜3年前の跡。」
悠紀はそう言って無理に口角をあげた。
それでも私の表情は晴れなかった。
「…死にたかったの?」
「ううん。口では死にたい死にたいって言ってたけど、本気で死ぬ気なんてなかった。
手首切ったのは他にはけぐちがなかったからだよ」
悠紀は自分の手首を握りしめた。
私は何も言う事が思いつかず黙っていた。
すると悠紀は、ぽつりぽつりと話しはじめた。
「あたしさ、すっげー人見知り激しかったの。」
悠紀はおにぎりの封を開けながら話しはじめた。
「今もだよね。」
私は笑った。
「今よりひどかった。話し掛けられても返事できなくて、笑顔も作れなくて。
それが原因で、中一の時虐められてた。」
悠紀は話し続ける。
「世間で言われてるいじめ程ひどくないけどね、悪口言われたりシカトされたり、その程度。」
「それも充分いじめだよ」
私は口をだした。
「まぁその時の私はすごい辛かったからいじめになるのかな。それでも毎日学校は通ってた。
中2になった時に友達ができたの。て言っても、私が1人でいるから気を使って近付いてきた子達なんだけどね。
みんな友達になったっていうか、友達になってあげた、みたいな顔してた。
結局まともに人付き合いもできない私は、一歩上から見られてたんだ。
それから、マリエみたいに上のグループでハブられて、1人になってあたしの所に来た子がいたの。
あたしはあの居心地悪いグループにいるよりはこいつといる方がマシだ、と思ってその子とつるみはじめた。
そいつわがままだから振り回されてばっかりだったけどね。
でもそいつのおかげで、友達付き合いのしかたとか覚えた。
普通の女の子はこういう考え方するんだ、とかね。
結局その子は中三になって一切関わりなくなったけど、そいつに学んだ事いかして中三はまともに友達ができた。
上辺だけの友達がね。
それであたしは変わろうって決意した。
このまんまだったらあたし負け組のまんまだと思って。
それでこの学校来て今がある。
リスカしてたのはその中1中2時代だけだよ」