知れば知る程、悠紀はよくわからない人だった。
何ごとにも感心がない人間だと思う事もあれば、
あぁ、彼女は私を含むほかの人間となんら変わらないんだなと思う事もある。
恐らくそれらの彼女の感情は私にしか見せない表情だろう。
私にしか心を開いていない、という言い方はおかしいけど彼女が心底心の内を明かしているのは私だけだと思う。
多少の意見のぶつかり合いもあるけど、私自身彼女とは何か通じるものを感じる。
兄弟や恋人とはまた違った絆。
だからこそ、何も恐れず彼女に何もかもさらけだせるのだろう。
「あゆみ、学校やめて本格的に芸能活動始めるんだって。」
パキッ、というポッキーの砕ける音と共に悠紀はなにげなく言った。
「…うっそー!ほんとに?!」
ここ3年ぶりぐらいの驚きだった。
こんなに驚いたのは3年前クラスメイトが妊娠した、という時以来だった。
あるいはそれ以上の驚きだった。
「だからここ最近来てなかったんだよ。」
悠紀は私が買ってきたポッキーを遠慮なくぽりぽり食べている。
「そっかー。あんな美人世間がほっとく訳ないもんね。」
私も負けじとポッキーを三本くわえた。