「…お願い、オレの為にそんなこと言わないでな」

男は汗ばんだ少女の額を撫でた。背を支え、リゾットを口に運んでやった。

母親は居ない、今回の病で死んでしまったのか、他の区画に避難しているのか…この子は語らない。


「…お兄ちゃん、抱っこして」

「…うん」


ギュッと強めに抱きしめた。

そのまま寝息をたてだした女の子を、洗われたシーツに変えたベッドに横たえた。


「…」

外に出れば雲一つない青空。
空に似た深い青色の瞳は、男の金の髪によく映えた。
ときおり吹く生ぬるい風が、髪をさらりと揺らす。

白い肌、端正な顔立ち…男はこの街の風景にそぐわない存在だった。