ジャド大公の命令、それは仕える自分達にとって絶対的なものであった。

「治す方法は必ずある…、生きてる人がいる間はあきらめちゃいけない…!」


「2週間前にタイリス入りしてたようねぇ、何か成果は得られているのかしらん?」

「…」


黙りこむしかなかった…成果と言えるものは何一つ無い。


「ほぉら図星ねぇ、こんな汚い街で生きながらえたって良いこと無いわぁ」

アハハと笑うカノー、静かに睨みつける青年。

「…ん~、慣れないコねぇ」

長い付き合い、気心は皆知れている。

どんな時も、どんな相手にも、冷徹なりきれない優しい青年は弟のように愛しかった。


…だが、万人に対しての優しさなど要らない、少なくとも自分たち『死神』にとっては。

(…ストークちゃん、傷つくのはアンタなのよ。早く気付きなさい…)


しばらくの沈黙の後、巨体が口を開いた。

「ストーク、我々は殺人をしに来たのではない。被害をこれ以上拡大させないためだ…そしてその仕事は我々が適任だったということだ」

「……適任」


その言葉が意味することは常人には分からないものだったが、青年は言葉を反芻(はんすう)するように目を閉じた。


「…さぁ、現状を教えてくれ。薬学に一番通じてるお前の意見が聞きたい」