「そーくんのいじわるぅっ!!」

「え? 何のこと?」

「ムーカーつーくー!!!!」

「廊下で叫んじゃダメだよ?さらに変な子に見られちゃうから、ね?」

 ぴきって。こめかみの部分っていうの?ご飯食べるとよく動くところ。鳴っちゃったからねっ!

「そーくんのバカバカバカバカァアアア!!!! キライキライキライキライィイイイ!!!! あたしはねえ! 総くんを構ってる場合じゃないのっ。 英明のプリンセスだかなんだか知らないけど、戦うんだから! ――ヒロっちもヒロっちだよ。一応彼女の目の前で、他の女の子の、しかも下の名前を呼び捨てだなんてっ」

 一思いに吐き出した想いを改めて自分の声で聞いて嫌悪感に襲われた。

 こんなこと総くんに言ったって仕方ないのに。それに、嫉妬深い女の子は嫌われちゃう。

 あたしは子ども、子ども……。大人にならなくちゃダメなの。

 あんなことでヤキモチ妬いてたらこれからどうやって……どうやって里美ちゃんと戦うの。

「そういうことね」

 ふわっと返ってきた言葉は、あたしを優しく包んだ。

「ヒロっちには言わないで……お願い」

 小さく頭を下げたそれにずしりと重いものが乗っかった。

「別にいいけど、一つ条件」

「――条件?」