グイッと後ろに引っ張られた腕の所為で前に振り出していた脚は小さく半円を描き、進行方向とは逆を向いた。

「みーちゃ……どうして、泣いてるの?」

 あたしの両肩を掴むのは多分総くん。あたしは俯いてぎゅっと両脇に握りこぶしをつくってる。

「ヒロとケンカでもしたの?」

 心配そうな声音は後頭部に染みてじーんとする。

「……ケンカ、じゃない。あたしが……勝手に泣いてる……だけ……」

「じゃあ、何があったの?」

 何でもないと言うように俯いて首を振ったあたしは踵を返して歩き始めた。

 とことこと歩き始めれば「泣いてるのに何も言わないの?」と総くんがついてくるのが分かる。

「……ついてこないで」

「どうして泣いてるの?」

「……だから、ついてこな――」

「誰かにいじめられたの?」

 ひょいっと前に出てきたと思ったら、あたしの頭の高さに屈み覗き込んできた。いや、きやがった。

 むっとして総くんを見るけど、本人は自覚無しで「ん?」と首を傾げる。

 右に歩きだそうとすれば右に来るし、反対に左に歩きだそうとすれば左に来るし。

 あっ、すみま……すみませーん。 状態なんですけど。