抱きしめられるだけでこんなにも安心してしまうのはヒロっちだから。
好きって言いたくなるのも、好きって聞きたくなるのも全部全部ヒロっちの所為なんだから。
「総くんと話せば、ヒロっちはあたしのこと『俺のものだ』って言ってくれるの?」
「……は?」
「どうして二人のときは言ってくれないの? ……付き合ってない、の……?」
「笠井……お前、頭イカれ――」
「――てないよ。だってわかんないんだもん。……ホントはあたしで遊んでるの?」
ぎゅっとワイシャツを握りながら見上げれば、つーっと涙が頬を走る。
それを優しく拭った長い指は五本に増え、頬を撫でて髪の毛に絡ませ頭を支えた。
近づく綺麗な顔にゆっくりと目を細める切れ長の瞳。
――キスしたい
だけど、何もはっきりさせないのにキスされても嬉しくない。
「……やだ。離して……」
ヒロっちの胸を押して俯くあたしは言ってほしいの。付き合ってって。ただそれだけがほしいの。
小さい頃から空手空手で恋なんてしてこなかった。だからってわけじゃないけど、保健室の男の子――たぶんヒロっちを好きになったのもキスしたのも初めてだった。

