そのまま生徒会室を出ていこうとするヒロっちを呼び止めたのは、一緒に帰りたかったから。

「……待っててもいい?」

 他のみんなは聞いていない、二人だけの空間。

「………好きにしろ」

 その一言だけを残し背中を向けたヒロっちは、静かにここを出ていった。

 ふふっ。好きにしろだってえーっ。なんだかどこぞのご夫婦みたいだ――

 「ねえねえ千紗。今日アイス食べてもいい?」と金魚のフン状態のタツキさん。

 「好きにすればいいじゃない」と鬱陶しそうにフンを払うちぃ。

 ――ねーっ!!

「にこにこしちゃってえ。みどりちゃん何か良いことでもあったんでしょー?」

 興味津々にハヤシっちがあたしの顔を覗き込んで、ほっぺをつっつく。

「うふふっ」

 笑って手元にあった資料を手に取り、棚にしまったあたしは、ヒロっちが戻ってきたらすぐに一緒に帰れるように荷物をまとめる。

 だいたいの帰り支度が済んで、なんとなく窓の外を眺めていた。ほんの少し、窓を開けたくなって鍵に手を掛けた時。

 遠慮がちにドアを叩く音が響いた。