「………いいもん」
「何がいいのよ」
「片想いでもいいもんっ」
「はあ?」
「分かってるっ!ヒロっちがあたしのことただの“チビ”ってしか思ってないことだって! ……だけどヒロっち優しいから……好きになっちゃったんだもんっ」
バンッとテーブルを叩きながら立ち上がったあたしに、一瞬目を丸くしたちぃだけど、お茶を一口飲んでから、
「落ち着いたら座りなさい」
無表情でそう言った。
何度か深呼吸を繰り返してから、ゆっくりと腰を下ろしたあたしにちぃは「可愛い顔が台無しよ」と微笑む。
「……私はね、嬉しいの。みどりが『一目惚れしちゃったかもっ』て中3の時聞いて」
「どうして?」
「佐野のことがあったでしょ? だから、みどりが男性恐怖症とかになったりしてお嫁に行けないんじゃないかって心配してたの。 でも、心配無用だったみたいね」
ふうっと安心したように息を吐いたちぃは席を立って対面式キッチンに向かった。
「仕方ないけど、みどりが寝込み襲った初恋の人が“広川卓也”だっていうことを祈ってあげるわ」
頭を傾けるちぃはいつもより色っぽい。
「恋をするって良いことじゃない」
そう呟くちぃは、ホントに同級生なのか疑いたくなるほど大人っぽくて綺麗な笑みだった。

