「どどどど、どうなのってっ。な、何もないに決まってるじゃんっ」
「………怪しい」
「ほほほ、ホントに何もないよ?きょ、今日だってそんなに話してないし?」
話した回数なんてたぶん両手だけで足りるっ。
「ほーんと。どうしてあんな堅物が好きなのよ、みどりは」
「だってえ……」
好きなものは好きなんだもん!
ちぃだったらパスタとか、あたしだったらグラタンとか、好きなものには理由なんてないっ。
なーんて昔ちぃに言ったら『人間と食べ物を一緒にするな!』って怒られちゃったんだよね。
「ホントにタクで間違いないの?人違いの可能性だって――」
「それでも!あたしはヒロっちが好き。例え人違いでも、今のヒロっちが好きなんだもんっ」
眉を寄せていつの間にか起き上がっていたちぃを見ればひょいっと肩を竦めてみせた。
あたしの初恋。
それは中学3年生の最後の夏だったの。
◇◇◇
―――ミーンミンミンミーン、とミンミンゼミか鳴き喚くある夏の日。
空手胴着を脱ぎ捨てた当時中3、15歳のあたしは一試合を終え他の部活の試合を見ていた。

