ブレイク

たくさん並ぶ、小さな、家とも呼べないようなボロボロの建物。

俺はその一つに入った。

その6畳にも満たない狭い部屋の中、妹のリンが一生懸命に縫い物をしていた。
「ただいま。」

声をかけると、リンはぱっと顔を上げた。

「おかえり。
お兄ちゃん、どうだった?
お仕事決まった?」

「…ダメだったよ。

まともにすら取り合ってもらえなかった。」

そう言うと、リンは道具を部屋の隅へ片付けながら言った。

「こんな時代だもん。
仕事がない人はいっぱいいるから仕方ないよ。
だから、元気だして。」

「リン…ごめんな。」

それでもうつむいている俺を見て、リンが言った。

「いいって。
それより、ご飯のしたく、しなきゃね。

食べて元気つけよ。」

「あ、ああ…。」

「私、水汲んでくるから、お兄ちゃんは休んでて。」

ぽん、と俺の肩をたたくと、リンはバケツを持ち、外へ出て行った。