「青山さん?青山さーん?」


ガッターン!!


哲也の呼びかけにハッとした春人は、派手にイスを倒してしまった。


「わ、悪い…すみません…」


春人は周りの人に頭を下げて、座り直した。


「青山さん…どうしちゃったんですか?何か思いつめたような顔して…」


「あっ…いやっ…、なんでもないよ」


春人は、6年前のことをこんなにも鮮明に覚えている自分に感心した。


「はぁ…」


真奈美を失ってから、春人は人を愛することができなくなってしまった。


「ため息なんてついちゃって…やっぱりなにか思い出してたんじゃないですか?」


「ん…まぁ…ちょっとな。俺にもいろいろあるんだよ」


「まさか、あの人が昔の恋人に似てるとか言わないで下さいよ!!」


ぶっ…!!

「ゲホッゲホッ、へ、変なこと言うなよ!」


図星なだけに、春人の動揺は隠せなかった。