拓磨の熱も下がり、よく眠っているのを見届けると、春人は自分の部屋へ戻った。


部屋に入ると、真奈美が静かに眠っていた。


「ただいま…」


春人は静かに囁いて、真奈美の寝顔を見つめた。


かすかに、涙の跡が頬に残っている。

まぶたも少し赤くなっている気がした。


「一人で…泣いていたのか…」


春人の胸はズキリと痛んだ。


「力になりたいって言ったばっかりなのにな…」


そう言って真奈美の頬をなでる。


「ん……、ごめんね…、ハル…」


「え?」


あの雨の日の言葉を再び聞いた春人は、気になって仕方なかった。


『ハル』というのは誰かの名前なのだろうか…。


「俺…のことじゃないよな…」


春人が一人で呟くと、真奈美はゆっくりと目を開いた。