君がいた風景

拓磨の部屋に戻ると、女将の姿はなかった。


「忙しいのかな…」


春人は呟きながら拓磨の横に座った。


「春人…」


そっと拓磨は目を開いた。


「拓磨…起きたか…具合はどうだ?」


「ん…大丈夫だよ、これくらい…」


拓磨は弱々しい笑顔を見せた。


「それより春人…今日は何の日か覚えてるだろ?」


「あっ…女将さんの…」


「うん、そこの引き出しに入ってるんだ…春人…お願い…」


春人は拓磨が指差した引き出しから、水色の布で包まれたプレゼントを取り出した。


「それをばあちゃんに渡し…」


ガチャッ


「あら、春人くん…拓磨…起きたのね!」


目を覚ました拓磨を見て、女将は声を弾ませた。


「ほら、拓磨…自分で渡せよ」


春人は拓磨の耳元で囁いて、頭をポンっと撫でた。


「うん…、ばあちゃん…これ…」


「ん?なぁに?」


「あけてみて…」


女将は不思議そうに水色の布をそっと開いた。