「みなさん、今晩は。今日もゆっくり楽しんで行って下さいね。では、聞いて下さい。」


ステージに立っている女性は、ピアノのメロディに合わせて歌い出した。


色が白くて、サラサラの髪、すらっと痩せた綺麗な女性。


少しハスキーだけど、どこか優しさのある声に客たちはくぎづけだった。


「いいっすよねぇ〜彼女。俺すげぇタイプっす」


春人は哲也の言葉など全く聞こえていない。

気持ち良さそうに歌う彼女から目が離せないでいた。


「青山さん?聞いてます?まさかっ…青山さんもドストライクですか?!」

そう言って哲也は春人の肩をガシッと掴んだ。


「ダメですよ!俺が先に見つけ……あれ?青山さん?」


春人の顔を見た哲也は動揺してしまった。

春人は涙を流していたのだ。


「ど、どうしたんですか?青山さん…」

「あ、いや…悪い…あまりにもいい曲だったから」

春人は慌てて涙を拭いた。

「なんだ〜焦りましたよ!昔の恋愛でも思い出しました?」

「いや、そんなんじゃないけど…疲れてんだな、きっと」

そう言って春人はもう一度彼女のほうを見た。


本当は、思い出していた。

6年前に愛したあの人のことを…。