旅館に着くとすぐに、女将さんの姿を見つけた。

「女将さん!!」


春人の声に振り向いた女将は、ぐったりした拓磨の姿を見て真っ青な顔で駆け付けた。


「た、拓磨…いったい何が…」


「ごめんなさい…私のせいで…」


「あなた…真奈美さん…?」


「話は後だ、早く、着替えと布団を…」


「そ、そうね…こちらへ…」


拓磨を部屋へ運び、着替えを済ませて布団へ寝かせた。


「真奈美さん、俺達も着替えないと…」


「はい…」


春人はさりげなく真奈美の手を引いて、自分の部屋へ連れて行った。


「さぁ、入って」


「でも…」


「心配しなくても、こんな時に何かしようなんて思ってないですよ」


「そんなこと…、お邪魔します…」


「はい、どうぞ。浴衣が何枚かあるから、さぁ早く熱いシャワー浴びたほうがいい。」


春人は穏やかな顔で言った。


「ありがとう…」


真奈美は泣きそうな顔をしながら、浴室へ向かった。