しばらくしてずぶ濡れになった春人が拓磨を抱えて、川からあがってきた。


「真奈美さん!!真奈美さん!!」


春人は必死に真奈美の名前を呼ぶ。


「わた…わたし…また…」


真奈美は真っ青な顔で震えていた。


「真奈美さん!しっかり!早くっ傘を!!」


「は、はいっ!」


真奈美は震える手で傘を掴むと、二人のところへ駆け寄った。


「た、拓磨くん…」

「拓磨!!拓磨!!」

春人は拓磨に呼びかけながら頬を叩いた。


「拓…磨…くん…わた、わたし…ひっく…」


真奈美は拓磨の白い顔を見て泣いている。


拓磨は水を吹き出し、そっと目を開けた。


「オレは…大丈夫…」


「くっ…ごっ…ごめんなさ…ひっく、ひっく…」


真奈美の苦しそうな泣き声はどんどん激しくなる。


「拓磨…大丈夫か?寒いだろ?今、家に連れてってやるからな?」


「うん…」


弱った拓磨はそっと目を閉じた。