彼女に声をかけてから、春人の気持ちはますます高まっていた。


自分から声をかけておいて、いきなり走り去るなんて変なヤツと思われたに違いない。


恥ずかしさのあまり、次の日もその次の日も会いに行くことができなかった。


ガチャッ。


春人が静かに外を眺めていると、いきなり部屋のドアが開いた。


「春人…ヒマ?」

「拓磨…」


いつもヤンチャな拓磨が下を向いてもじもじしながら部屋に入ってきた。


「お前…ノックくらいしろよな」

「春人、聞いてくれる?」

「お、おお…なんだ?」

「あのさ…」

「うん、マナちゃんがどうしたって?」

「っっ!!!」

マナちゃんの名前を出すと拓磨の顔がリンゴのように真っ赤になった。

「もういい!!!」


そう叫んで、拓磨は走ってドアのほうに向かった。


「ちょっ!ごめん!拓磨!!悪かった!ちゃんと聞くよ!」


春人は焦って拓磨の腕を掴むと、拓磨は涙目になっていた。


「悪い、ごめんな?話はなんだ?」


「うん…」

目に浮かべた涙を拭いて部屋の座布団に座ると、また拓磨はもじもじしながら話しだした。