急に偏頭痛に襲われた。ずき、ずき、と繰り返す痛みに思わずこめかみを押さえ立ち止まる。ぴーっと鳴り響いたやかんの音が、より痛みを増幅させた気がした。


「痛、」


単調に繰り返されるそれは、どんどんと頭の中を侵食していく。左側だけだった痛みが額へと広がり、少しずつ、少しずつ、けれど確かに侵食していく。


「い、た、いたた」


ぴーっと未だ鳴り響くやかんの音がうるさい。頭蓋骨を叩くような痛みがうるさい。ずき、ずき、と偏頭痛がうるさい。がつ、がつ、と叩くその音がうるさい。がつ、がつ、と、がつ、がつ、とだんだんに侵食していく偏頭痛はすでに偏頭痛などではなく、


「い、」


た、と言う前に、頭蓋骨が割れて、脳味噌から何かが生まれた音を聞いたような聞かなかったような。もう、何も考えられないけれど。



49,偏頭痛【エンド】