幽体離脱なんて初めてのことだと、場違いにも少しだけ感動を覚えていた。
さっきまでは殺るか殺られるかの緊迫した修羅場だった。
刺された瞬間はそれは激痛にのたうち回ったものだが、死んでしまえばなんのその、寧ろ清々したくらいだ。


「あいつ慌ててるなあ」


自分を刺した男を悠長に眺めながら、そんな感想が述べられるほどの余裕ぶりだ。
大層な人生は送ってこなかった。
その自覚はあるから、殺られたところで文句は言えないし言うつもりもない。
そういう生き方をしてきたし、そういう世界に身を置いてきたに相応しい末路だとも思っている。
それにしても。


「あんなんじゃすぐあいつも……ああ、やっぱり」


案の定、他の男が入ってきたかと思えば、すぐにそいつも刺されてしまった。
同じ穴のムジナなのだから、まあそんなものだ。


「よう、相棒」
「相棒じゃねえよ」
「そういうなよ、同じ穴のムジナだろ」


ぱっと現れたさっきまでの敵に、肩をすくめてそう言ってやった。


「……悪かったな」
「いいってことよ」


次はもう少しマシに生きようぜなんて、肩を並べて、二人で清々した。



45,同じ穴のムジナ【エンド】