ある日、テレビニュースで「明日世界が終わります」との発表があった。
ある人は「ああそう」と野菜炒めを作る片手間に呟き、ある人は「へえ」と興味なさげに煙草をふかし、ある人は「もう終わるの」「大変ね」と井戸端会議をした。
あるところの少女はびっくりしてひっくり返った。
少女にしてみれば初めての何かが終わる体験であり、尚且つそれは世界という大規模且つ重大な問題だ。


「ママ、ママ、大変!世界が終わるって」
「へえ、そうなの」
「どうしよう、ひとりぼっちになったらどうしよう」
「あら、大丈夫よ」


少女の母親は笑ってそうなだめた。
少女は思った、「ああ、皆死んじゃうからひとりぼっちにならないって意味なのかな」そう思ったが最後、少女はより一層恐怖に駆られた。
どうやって世界は終わるのか、どうやって皆は死んでしまうのか、少女の想像は止まらない。
想像は妄想になり、ついには妄執となり果てて弾けた。
そうして翌日、世界はニュース通りに終わった。


「おはようございます世界の皆さん。昨日で世界は一旦終わりました。今日からまた新しい世界です、頑張りましょう」


少女の家で、朝のテレビニュースを見ていた母親はキッチンで鮭を焼いていた。


「今日から新しい世界なのに、あの子ったらまだ寝てるのかしら」


弾けてしまった少女は知らない、世界がそういう構造だということを。
母親も知らない、少女が本当にひとりぼっちになってしまったことを。



42,世界の終わりにひとりぼっちで
【エンド】