突然、死期を宣告された。
至って健康な俺は、健康故に莫大に膨れ上がった人口削除の対象となった。
健康も不健康も関係ない。
政府が無作為に抽選で選んだ者達が対象となる。


「あなたは明後日、削除されます」


急に自宅に掛かってきた電話で、受話器越しの事務官が抑揚なくそう告げた。
絶望感はなかった。
余りに当然の如く告げられたそれに、只単に、そんなものかと思った。


「よくやったわね」
「流石は俺の息子だ」
「お兄ちゃん、すごいね」


口々に褒め称える家族。
削除対象者のいる家庭には、多額の報奨金が支払われるシステムとなっている。
どの程度の額かは知らないが、立派な家一戸が建てられるくらいではあるらしい。


「で、どうする?ハガキが届いたんだけど、首吊りか射殺かガスか、選べるみたいよ」


嬉々としてそれを見せた母親に、何が正しいのかわからなくなった。


「射殺がいいんじゃないか?首吊りは後が汚らしいし、ガスも種類によっては見られたもんじゃないぞ」


煙草をふかしながらそう意見した父親に、そうだねと、適当に応えた。
良いも悪いもない。
正しいも間違いもない。
圧倒的な権力の前で、俺は只、死に方を選ぶくらいしか出来ないのだ。


「残り二日間か」


一人呟いて、とりあえず、家族を皆殺しにすることにした。



19,削除対象【エンド】