息子の遠足が明日に迫っていた。
初めての遠足に、息子の心は踊っているようだ。
うきうきしながら、あれやこれやとリュックサックに楽しそうに詰めていた。


「そんなに持っていくの?」
「だって、何があるかわからないじゃない」
「まあそうね」


こんなご時世だ、確かに、何があるかはわからない。
息子の言葉に最もだと頷いていたなら、うきうきし過ぎた息子から、たたたっと一番大切なものが先走りした。


「あらあら大変」


走りだしたそれをぱっと捕まえて、たしなめながら振り向いた。


「また足が遠くに行っちゃうところだったわよ」
「あはは、遠足だからね」


代わりの足も持っていかなきゃね、と、ぱんぱんになったリュックサックを眺めて、二人でまた笑った。



18,遠足【エンド】