びっくりしたのはケンジくんも一緒で、しげしげと、僕の持つ地球を眺めている。


「本物……とか?」
「ま、まさか……た、たまたまだろ」


何となく怖じけづいてるケンジくんが、はは、と空笑いした。
まさかだ。
そんなわけない、たまたまだと僕も思う。
思うけど、何となく気持ち悪い。


「知らないおじさんにもらったやつだしね」
「捨てちゃうか」
「何かやだよね」


まあるい青いそれは、確かに綺麗だけど。
綺麗だからこそ、何となく生々しい気がした。


「なあなあ!せっかくだから沈めてみようよ」
「えー何かこわくない?」
「だから、偽物だって!」


いやだな、と思ったけど、ケンジくんは言い出したら聞かない。
そんなちょっと強気なとこが、ちょっと弱気な僕にはいいのかもしれないけど。


「どこに?」
「あそこの公園の池でよくない?」


指さしたケンジくんに連れられて、僕はまあるい青いそれを、何となくそうっと運んだ。
偽物だって思ってる。
思ってるけど、何となくだ。


「いっくぜー!」
「う、うん」


いいのかな、そう思った。
遠くで波の音が聞こえた気がした。

今思えば、やめておけばよかったんだ。



12,地球を沈めてみようよ
【エンド】