やめてくれ、もうやめてくれ。

 自分より随分若い、まだ幼さの残る少年の足にすがり付き、懇願する。
 少年はそんな俺の声等まるで聞こえていない様子で、黙々と作業を続けた。

 女のか細い肩を鷲掴み、掻き毟り、髪を引きちぎる。
 目の前で壊されていく。
 俺の愛した女が。

 少年の背中越し、苦悶の表情でこちらに手を伸ばす彼女が見えた。
 俺も慌てて手を伸ばす。
 もう少しでお互いの指が触れようかという時、頼りなげな細い手首を、白いスニーカーが踏み落とした。

 何故俺達がこんな理不尽な目にあわなければならないのか。


「何なんだよ、何でこんな事するんだよ、誰なんだよお前は。
 どうしてそっとしておいてくれないんだ」


 現状が理解を超え、訳も分からず涙が溢れる。

 それは、名前も知らない少年に対する怒りなのか。
 助けを求める彼女に何もしてやれない、無力な自分に対するものなのか。

 分からない。
 分からないけれど、こうしている間も、少年はただ坦々と彼女を壊し続けるのだ。