「にがっ!!」


そのコーヒーは舌がねじれるのではないかと思うくらい苦かった。


「マスター、いくらなんでもちょっと苦すぎない?これ?」


「おや、そうでしたか?それは失礼いたしました。少し秘薬を入れたものですから。」


「え?」


「どうぞ、砂糖とミルクを入れてください。」


そう言ってマスターは私の前にそれらが入ったウェッジウッドの小瓶を差し出した。


「い、いらないわよ。太るじゃない。」


「あなたは、ご自分の姿を鏡で見たことがありますか?」


「え?」


私にはマスターの言っている意味がわからなかった。


「あたり前じゃない。毎日見てる…わよ…」


私はふと店内の壁にかかっている全身鏡に目をやった。


…え?


「あ、あれ?」


ガタン。


私は椅子から立ち上がり、ふらふらと鏡の前に立つ。


「これが、私?」


そこには見たこともない自分がいた。