「本当に会わなくていいの?」


福原さんが俺の顔を心配そうに覗き込んだ。


「はい。いいんです。」


俺はそう言って福原さんに買って来た袋を渡した。


「これ…可奈の大好きなお菓子なんです。これだけ可奈に渡してください。」


可奈の手術の日。


俺は朝、病院のナースステーションに立ち寄り、福原さんにそう頼んだ。


「わかったわ。渡しとく。」


福原さんの笑顔に俺は安心して、帰ろうとした。


その時、


「おじちゃん!?」


背後から可奈の声がした。


「おじちゃん、おじちゃんでしょ?!」


看護士さんに車椅子を引かれながら可奈が俺の方に向かってくる。


「あら、見つかっちゃったわね。」


と 福原さんが微笑んだ。


「お、おはよう。可奈。」


俺は戸惑ってしまった。
可奈の顔は見ないつもりだったのに。