「はい、ポテチだよ。」


次の日、俺は、可奈にポテチを返しに行った。


可奈は心なしか元気がなかった。


「可奈ね、大きくなったらバスの運転手さんになるの。」


俺が行くなり可奈の第一声はそれだった。


「どうして?」


俺が聞くと、


「おじちゃんも福原のおばちゃんもポテチもみ〜んなで一緒に遠くに行けるから。」


と可奈は言った。
そこに、パパという言葉はなかった。


「そうか…。」


可奈の気持ちが痛いほどよくわかった。


「だから、可奈はさみしくないよ。」


そう言う可奈の小さな肩は震えていた。


「バ。」


突然、ポテチが可奈のひざに乗った。


「なぁに?ポテチ。」


可奈はポテチを抱き上げる。


「ポテチは可奈にがんばれって言ってるんだよ。手術も、新しい暮らしもがんばれって。」


俺が言うとポテチはしっぽを振った。


「ポテチも可奈と一緒に行く?」


と可奈が言うと、


「つれていけバ。」


とポテチは言った。


「うふふ。うれしい。」


可奈はさらにポテチを強く握り締め笑った。