「こんな遅くに、お仕事の帰りですか?」


マスターが言う。


「いや、そうじゃない。ちょっと…」


言い掛けて やめた。


マスターはそれ以上何も聞かず、ウィスキーといくつかつまみを出してくれた。


空腹には少々こたえる強香のアルコール。
それにぴったりと波長が合う料理たち。


俺は、数分もしないうちに酔いが回ってきた。


「マスターは子供が好きかい?」


俺は突然こんな質問をふってみた。


マスターは少し困ったような顔をした後、


「ええ。好きですよ。なぜです?」


と言った。


「俺の顔、ひどいだろ?」


俺は、店に入ってからもずっと脱がなかった帽子を初めて脱いだ。


「赤ん坊の頃、親に誤って熱湯をかけられたんだ。おかげでこのざまさ。」


俺の顔は半分火傷で皮膚がただれていた。
この顔のせいで今までどれだけ悲惨な目にあったかしれない。