すると、親父さんはさらに眉をひそめた。


「柏木さん…はご存知ないのかね?」


「え?」


「娘はね、昨夜 亡くなったんですよ。交通事故…で。」





満月が真っ黒い雲から顔を出し、僕と親父さんの顔を照らした。


親父さんの顔はやつれ、とても疲れ果てていた。


「え?」


肌寒い風に吹き飛ばされそうなほど小さな声が僕の口からこぼれた。


「死んだ…?」


「衝突事故…でした。相手のトラックが愛里沙の車に突っ込みましてね。一瞬で…。」


親父さんは言葉を飲み込み、口をつぐんだ。


「そ、そ…んな。嘘でしょう?だって僕は今日、昼間に愛里沙さんと電話で話したんですよ!」


「え?」


親父さんは目を丸くした。そして静かにこう言った。


「きみは、もしかしてケンタ…くんかい?」